昭和十六年八月十六日、十七日 ― 2019年11月03日 13:54
起きるとパーッと日がさしてまぶしく、きのふと入れかはればよかったのに…と思ふ。
母を御むかへに私だけ駅へ行く。旧道へ行って買物をしてゐたら電車が行ってしまったので、大急行で驛までかけて行った。汽車がつくのと丁度一しょだった。
※ 学校が靖国神社に隣接しているので、境内の掃除は自発的な奉仕活動だった。
昭和十六年八月十八日、十九日 ― 2019年11月03日 14:01
十五日に碓氷峠へ行くつもりだったのに行かれなかったから、今日行くことにした。大きなリュックをしょってバスで旧道まで行く。それからさうたう急な登りになって下の方で清流の音がしたり鳥が鳴くくらいでとても静かである。
※ 日本武尊は東国(関東)を平定して北へ進み碓氷峠に至る。旅の途中で没した弟橘姫(オトタチバナヒメ)を偲んでアズマハヤ(アア、いとしい我が妻よ)と嘆かれたと日本書紀にある。碓氷峠の熊野神社に吾嬬者邪(アズマハヤ)の立て札あり。
姉は千ヶ瀧の御友達の所へいらっしゃり、私は旧道へ一人で買物に行った。ま すます色が黒くなり悲觀する。その他変わったことはなかった。
昭和十六年八月二十日 ― 2019年11月03日 14:12
父が今日いらっしゃる豫定であったが、會社がいそがしくて來られないと電報が來た。
※ 騎兵将校の長兄の影響を受けているが教わったことはない。兄は長兄のくれた長靴(チョウカ)をはいている。馬場の練習などはなく、すぐ野外へ出る。車はほとんど通らず、土の道だから乗馬に向いている。
※ 自転車さえ禁止する親が多いのに、母親は乗馬をすすめてくれていた。そのためのお金もくれた。父親は無関心。私は二歳年上の兄と一緒だったから心強いが、中学一年生でよくやったものだと今更思う。次の年は旧軽井沢の乗馬クラブの馬を借りた。
■4コマ漫画のセリフ
:サッソウと乗りこなしてくるゾー 2:小さな女の子が来たヨ 3:なんだ新米か 4:どっかでふり落としてやろう
馬は利口だから初心者をバカにして思うように動いてくれない。
昭和十六年八月二十一日 ― 2019年11月03日 14:25
朝、又、馬に乘ってゐたら、八百屋の小父さんが馬でやって來て、ホテルまで馬で行きませんかと言った。兄も、少しこはそうだが行くことにして、私は小父さんの馬に乘せてもらった。ホテルは押立山といふ百米の山の頂上にある。
昭和十六年八月二十二日、二十三日 ― 2019年11月14日 18:01
昭和十六年八月二十四日 ― 2019年11月14日 18:21
今日は不破さんと旧道で會ふ御約束をしたが、朝雨がぽつぽつ降って來たのでどうしようか迷った。
※ 現在も結婚式などで人気あり。
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