和子さんの冬休み絵日記2020年12月27日 16:33

昭和十六年 十二月三十一日 水曜 睛

もう今年の終ひの日がやって來た。

だが今度は敵機がとんで來るかも知れないのだ。もう一度ホースや樽を持ち出した。

二階をおさうぢする。明日のために制服にブラシをかける。

晝から卵や寒天などの御料理をつくるお手傳をした。

寫生のために福壽草を花屋へ買ひに行ったらもう賣切たさうだ。

戰時下とはいへ大晦日の街はざわめいて、春を迎へる用意のため、人々はいそがしさうに行き來してゐた。

小さいながら門松も立って、羽根つきの音がする。

お書初めの練習をした。


昭和16年12月30日




和子さんの冬休み絵日記2020年12月27日 17:13

昭和十七年 一月一日 木曜 睛

大東亞戰爭下に十五の春をむかへた。

新年のごあいさつをし、おとそを飲んで御雜煮を祝って學校へ行く。新春の陽が街の上に出初めた。

學校へ行くと、おめでたうを言ひ會ふのにいそがしい。皆さんお元気らしかった。

式が終って、早くかへらうと思ってゐたが御清掃があることになった。一寸がっかりしたが、事が靖國神社の御清掃、ほかのことならとにかく何で不平などいへようか。

家へ歸ると父母達が義兄(姉の夫)のらしい部隊が新聞に出てゐて、苦戰ゐるらしいといって心配して居られた。

着がへて新宅(となり)へ新年のあいさつに行って、百人一首などして遊んだ。去年より大分とれる様になった。

父の會社の御客様に御料理を持って行くと、ずい分おおきくなりましたね、といはれる。


昭和17年1月1日




和子さんの冬休み絵日記2020年12月27日 17:17

昭和十七年 一月二日 金曜 睛

ニュース映畫を見に行く。少々短くてあっけなかったが、皇軍の赫々たる武勳と御苦勞が察せられた。

晝からは羽根つきなどした。

今夜は初夢を見るのださうだが、一かうそれらしきものは現れず目がさめてしまった。



昭和17年1月2日