昭和十六年八月二十六日ー 二十七日2019年12月16日 16:13

八月二十六日(火)晴
 今日は馬に乘らなかったが兄は行った。
  馬車屋の小父さんは、東京の千住の方の馬の實驗所へ九月にかへるからそこへ行けば馬も居るし、ポニーといふ小さな馬にも乘れると言ったので早く行ってみたくなった。 
 あさって歸京なのでいらないものをしまったり片附け始めた。 
 もう野原にすゝきが出てきた。來た時には全然ないけれど、すゝきの出る頃になるとかへらなくてはならないので、私達にとっては出て來ない方がよい。もっと居たいナーといふ氣持が起こる。


八月二十七日(水)晴
 午前中にチッキをこしらへなければならないのでいそがしい。それでもどうやら荷物※にして送り出した。
  午後から旧道へ行く。兄は馬に乘った方がよいといふので、母と姉と私だけで行った。 
 買物を急いでする。もうこれで町ともおわかれだと思ふと、何だかさびしい。もう大分歸った人があるらしく、かへりのバスはいつになくすいてゐた。
  夜、押立山のホテルに灯がついて、それがまるでゆびわのやうにきれいだった。

※柳行李。旅行や学生の下宿生活に便利。

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