昭和十七年八月十日2020年04月11日 11:56

八月十日  

 今日は父が東京へ帰られる。三時の汽車だが丁度よいバスがないので十一時の旧道の方へ行き、ぐるっと徒歩で三笠ホテルの方へまわって二時半頃駅へ行った。日曜はこむと思って、わざわざ月曜にしたのだがどうしてどうして。皆そんな考えなのかどうかはわからないが、一杯の人だ。改札口に一ぱいならんでゐる。兄が先に入ってうまく席がとれた。

 三時間の後には暑い東京へおかへりになるのだから御気の毒と思ふ。どこかの女學生の一團が車中とプラットホームでテープを投げてゐた。發車の汽笛が三つ、前の機関車から順に鳴って、あっけなく汽車は出て行った。兄と二人で二十六号トンネルの所で待ってゐやうと思ったら、あぶないあぶないとおっしゃるのでやめた。

  早い御飯の最中、事務所の人が今晩高原寮で映画がありますからと言って來た。
  七時頃、ちゃうちんをぶらさげて出掛けた。行って見たらまだ始まってゐないのでその辺をぶらぶらしてゐたら始まった。廣間に白幕をかけてある。電燈が消えた。十六ミリだけれど、いはゆる雨降りではなく、とてもはっきりしてゐる。始めは、文化映画の様なもの「うにとその仲間」うにやひとでの足がとてもきれいだった。次は漫画で「海の水はなぜ辛い」。

  稲光のピカピカする中を帰った。





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